道具の進化とスコアの関係

今回のテーマは、道具の進化がスコアにどれくらい影響があるかについて考えます。事前予想では「ほとんど影響ない」と高をくくっていたのですが、ツアープロ同士の争いになると結構シビアな影響がありそうです。


この考察には、アメリカPGAツアーの統計値 (stats) を使っています。
http://www.pgatour.com/r/stats/
上記ページには、1980年から最新の年のツアーの統計値ランキングを保存しています。平均飛距離、最大飛距離、パット数、などの馴染み深いものから、 「ラフからグリーンに乗せられる確率」、「200~225ヤードの距離からグリーンにのせた確率」のランキングなどかなり細かい数字も見ることができてな かなか面白いです。



まずは、平均飛距離のグラフです。



年々の道具の進化が最も顕著に現れるグラフです。注意点として、PGAツアー参加者全員の平均値でなく、各年のランキング1位の選手の数字をグラフにしました。できれば、ツアー平均値をグラフにしたかったのですが、さすがに労力的に無理があったので。。。。。

それはさておき、各社が毎年しのぎを削って、宣伝文句の知恵を絞り出してマーケティングして売るドライバーとボール。これはある程度、宣伝に偽りはないよ うです。(2002年くらいから結局、PGAのトップの平均飛距離は変化してないのは置いておいて)、30年の間に平均飛距離が30ヤードは伸びてます。 コース整備技術が進化して、フェアウェーの転がりがよくなったとしても、明らかに道具の進化が如実にあらわれています。80年前半は、Jack Nicklaus。90年はJohn Daly。最近は、Bubba Watsonが飛ばし屋代表ですね。

ここでの結論は「糸巻きボール+パーシモンドライバー+スチールシャフト から、3ピースボール+チタニウムドライバー+グラファイトシャフトに進化することで飛距離40ヤードアップ」


問題は、それがスコアにどう反映するか?


ということで、これまた年間平均スコアランキング1位のプレーヤー達のグラフです。2000年だけ異様に出っ張っているのは、Tiger Woodsが猛威をふるっていたためです。



平均飛距離のグラフほど顕著ではありませんが、30年の間に緩やかに減少傾向があります。1980年に平均70ストロークくらいだったのが、2010年に は69ストローク前後にまで下がっています。1ラウンドで1ストロークだと、4日間のトーナメントでは4ストロークの差になりますから、プロにとってはか なり大きな差です。

しかし、このグラフは実際のスコア (actual score) の平均なので、使用コースのParの変化があったりすると、本当に平均スコアが1下がったかはちょっと微妙。

なので、Par-3, Par-4, Par-5ホールの各平均スコアを見てみます。


まずは、Par-3ホールの年間平均スコアの推移:



若干ノイズがあるものの、ほぼ横ばいで変化なし。古今、世界のベストでやっと平均3.0を切るのがやっとです。実はPar-3は年間通じて見ると、バーディよりもボギーの数の方が多くなる傾向があります。


次に、Par-4ホールの年間平均スコア:



2000年だけ3.90近くたたきだしているのは、またしてもTiger Woodsです。波状になる傾向もありますけど、平滑化して長いスパンでみると、3.97前後で横ばい。

これもPar-3と同じく、年間を通じて平均するとバーディよりもボギーが先行するプレーヤーが多いです。



最後に、Par-5。ようやく右肩下がりの傾向が現れました。



多めに見積もって、30年間で4.60から4.45に改善。18ホール中Par-5が4つ含まれるとすると、0.15 x 4 = 0.60 ストローク改善。4日間の試合で、2.4ストローク改善となります。

飛距離、とくにティーショットが飛ぶようになってPar-5が実質Par-4になるため、Par-5のスコアが改善されたといえそうですね。


Par-4であまり改善がみられないのは、度重なるコースの延長により、実質セカンドショットをうつ場所が昔も今もかわりがないのでしょう。毎年 Mastersを開催するAugusta Nationalは2001年から2006年の間に520ヤード延長工事が施されました。2001年は6900ヤード程度で、Jack Nicklausの時代から変化ありません。今は7400ヤード超で、500ヤード以上延長されています。ドライバーの平均飛距離が30ヤードは伸びてい ますから、500 ÷ 18 = 28ヤード。理論上は、道具の進化で十分に対応できそうな延長距離。



事実、スコアの善し悪しに大きく影響する「パーオン率 (Greens In Regulations)」や「第1パットのホールまでの距離(つまりどれだけアプローチをピンにつけられるか」をみてみると、著しい改善はみられません。





以前よりも「ミスに強くて、正確に飛ぶ」とされるアイアンを使い、スピン性能が改善され「飛ぶ」とされるボールを使ってもこの程度。各社の宣伝文句だと、 スナイパーで狙うように目標から半径1フィート圏内に毎回ボールを落とせるくらいの勢いですけど、結局は人間の運動能力の限界がきているのかもしれませ ん。



面白いことに、1ラウンドあたりのパット数には改善がみられます。



30年で0.5ストロークの改善。4日間のトーナメントでは2打差に相当しますので、優勝争いにはかなりシビアに効いてきますね。道具の進化、グリーン表面の整備、選手の技術力の向上が複雑に絡んだ結果なので、一概に道具による影響とは言えませんが、年々少なくなる傾向にあります。



まとめ

30年間のテクノロジーの進化において:
  • ドライバーの飛距離は30ヤード超伸びる。
  • Par-5は、勝つためにはバーディ必須。飛ばし屋有利? 道具の進化の影響が最も大きい。
  • Par-3, 4は、実質変化なし。
  • パーオン率、アプローチの寄せの正確性は実質変化なし。
  • パット数は改善傾向あり。
飛距離や正確性の性能向上という点では、技術的に大きな変化はなく、今後もものすごく緩やかに変化するでしょう。各社から膨大なクラブ、シャフト等が市場 に投入されているので、今後はいかにテクノロジーを使って、正確に個人のゲームに最適化するか、個人のスィングにあったクラブを的確に探しだすか、究極の ヘッドとシャフトとボールの組み合わせをサーチできるか、が気になるところですね。



結論
  • 上達するには練習あるのみ。
  • 道具がよいからといって勝てるわけではない。


課題
  • PGAツアー全体の平均値の傾向は、今回の結果と対応するのか? (相関性は高いはず)

0 件のコメント: