最近のラウンドデータを解析して、弱点分析をしてみます。
というのも、スィングがよくなり、飛距離が伸び、グリーンを捉える(パー・オンする)回数が増えたにも関わらず、どうしても80前半のスコアに収束しがちだからです。ショートゲームの改善が最も正しい方法なのは明白ですが、ではいったいどれくらいの数字に改善すればよいかを計算してみます。また、プロのラウンドデータと比較して、彼らとの根本的な違いやどうすれば70を切るラウンドができるかも考察します。
その前に、この文書 (およびブログ) で使う言葉を以下に定義します。
ショートゲームの打数 と ロングゲームの打数
「ピンから100ヤード圏内で打った打数 (= ショートゲームの打数)」と「ピンから100ヤード以上離れた地点で打った打数 (= ロングゲームの打数)」です。データを分析してていつも思うのは、ショートゲームの打数の出来具合が大きくスコアに影響しているのです。さらに、打数だけを単純に比較すると、ロングゲームの打数は、プロのデータとほぼ同じです。もちろんプレーするコースや長さは異なりますが、飛距離が仮に全く同じでも、プロとアマチュアの決定的な差はショートゲームです。自分の場合、1ホールにつき1打近く差が生まれており、18ホールで13~15打は毎ラウンド差をつけられるくらい強烈な差があります (後述)。
例1:
いわゆる2オン、2パット、または3打目を寄せて1パットで締めるパターン。下の図では、青い園内がピンから100ヤード圏内を示します。
- ピンから100ヤード圏内で打った打数 (ショートゲームの打数) = 2打
- ピンから100ヤード以上離れた地点で打った打数 (ロングゲームの打数) = 2打
例2:
自分に多いパターンとしては、Par-4でグリーン周りまでは2打でいくものの、寄せとパットが噛み合ずに結局3オン2パット。
- ピンから100ヤード圏内で打った打数 (ショートゲームの打数) = 3打
- ピンから100ヤード以上離れた地点で打った打数 (ロングゲームの打数) = 2打
スクランブル率
スクランブルは、寄せワンでパー以上を取った場合のことを指します。Par-4ならば、3オン1パット、3オン0パット (チップイン・バーディー、チップイン・パー)の場合、スクランブルに成功したとします。例えば、18ホールで12ホールでパーオンせず、そのうち6ホールでパーになった場合、スクランブル率は 6÷12 = 50パーセントです。
GIR
GIRはGreen In Regulationの略で、パーオンのことを指します。
Putts per GIR
Putts per GIRは、パーオンしたときに何パットでホールアウトしたかを意味します。例えば、18ホールで4ホールをパーオンし、
- 全て2パットでパーにした場合は、
2パット x 4ホール / 4ホール
= 2.0 Putts per GIR となります。
- 2バーディー、3パット1回の場合は、
(1パット x 2ホール + 2パット x 1ホール + 3パット x 1ホール) / 4ホール
= 1.75 Putts per GIRとなります。
自分のデータ
主に2013年の23ラウンド (414ホール)のデータを解析した主な統計値です。
- 平均スコア: 84.30打
- ピンから100ヤード圏内で打った打数 (ショートゲームの打数): 48.42打
- ピンから100ヤード以上離れた地点で打った打数 (ロングゲームの打数): 35.82打
- 1ラウンドの平均パット数: 32.78 パット
- Putts per GIR: 2.18 パット/ホール
- バーディー率: 8.70%
- パーオン率: 33.33% (6ホール)
- スクランブル率: 26.26% (12ホール中で3ホールでセーブ)
- パーオン2.53回につき3パットを1回
- プレーしたコースの平均距離: 6172ヤード (最長6718, 最短5724)
プロのデータ
プロの比較データとしては、
Tiger Woodsの2005, 2007, 2009年のMastersのラウンドデータ (計12ラウンド, 144ホール)を用意しました。データソースは、ESPNのスコアカードを基にしてます。
注意点としては、パット数が正確にはわからず、特に寄せてパーを取っている場合や、Par-5でのバーディーは、YouTubeのビデオなどを基に各ホールのパット数を推測しています。TigerにとってAugusta NationalのPar-5は実質Par-4であり、Par-5のバーディーの場合、2オン2パットなのか、3オン1パットなのか、ビデオを解析しないとわからないのです。それ故に、スクランブル率が若干低くなっている感があるのと、3パット数は144ホールの合計で0になっています。
スコアカード:
- http://espn.go.com/golf/player/scorecards/_/id/462/year/2005/tournamentId/210/tiger-woods
- http://espn.go.com/golf/player/scorecards/_/id/462/year/2007/tournamentId/309/tiger-woods
- http://espn.go.com/golf/player/scorecards/_/id/462/year/2009/tournamentId/537/tiger-woods
- 平均スコア: 69.50打
- ピンから100ヤード圏内で打った打数 (ショートゲームの打数): 34.20打
- ピンから100ヤード以上離れた地点で打った打数 (ロングゲームの打数): 35.28打
- 1ラウンドの平均パット数: 28.00 パット
- Putts per GIR: 1.64 パット/ホール
- バーディー率: 36.46%
- パーオン率: 66.67% (12ホール)
- スクランブル率: 57.23% (6ホール中で3.5ホールをセーブ)
- プレーしたコースの平均距離: 7435ヤード (1ホール辺り平均70ヤード程度長い)
以下、プロと自分のデータの比較です。
1. ショートゲームの打数
まず最初に比較して明らかなのは、ショートゲームの打数です。次のグラフに明確に現れています。上の図は、横軸にショートゲームの打数を、縦軸に18ホールのスコアをとり、各ラウンドのデータを緑でプロットしています。Tigerのデータは赤でプロットしました。下の図は、横軸にロングゲームの打数を、縦軸に18ホールのスコアをとり、同様にプロットしています。
まず分かるのは、
ロングゲームの打数が35前後でほぼ同じであることです。もちろん全く難易度の異なるコースおよび長さでのプレーですが、両者のティーショットの飛距離がおよそ70ヤードくらい違う(自分が230ヤード、Tigerが300ヤード)ことを加味すると長さに関しては程よくスケールされているでしょう。
ショートゲームの打数が明らかに異なります。さらに、両者のデータが同一の近似直線上に綺麗にのっかっているのがよく分かります(上側のグラフ)。
僕が100ヤード圏内に要するのは平均48.42打に対して、Tigerはわずか35.82打です。1ホール辺りに換算すると、0.7打の差です。
アンダー・パーでプレーするには、100ヤード圏内を平均して2ストローク以下で回るのが必須と言えそうです。ここがアマチュアとプロの決定的な差ですね。飛距離は違うのはもちろんですが、
仮に同じ番手で同じ飛距離を打ち、同じティーからプレーしたとしても、結局1ラウンドで15-20打の差がついてしまうかもしれません。
今の自分の理解では、神業としかいいようがありません。。。
2. パーオンを有効活用
GIR、パーオンの数が増えれば、アプローチをせず2パットさえすればパーが取れるので、セオリーでは、1つGIRが増えれば、1つスコアがよくなるはずです。次に作ったグラフは、GIRの数とスコアです。横軸にGIRの数を、縦軸にスコアをプロットしました。前のグラフと同じく、自分のデータを緑で、Tigerのデータを赤にしています。
グラフには、線形近似線 (y = ax + b) もプロットしています。グラフ中にあるSensitivityというのは、この近似線の傾き aの数字です。Tigerの場合は、セオリー通り1 GIRにつき、1打スコアがよくなりますが (-1.01)、僕の場合は-0.44で1回のパーオンあたり、0.5打しかよくなりません。
バーディー変換率も関係してくるのでしょうが、もっと深刻な問題は3パットです。自分の
Putts per GIRは2.18で、3パットは2.5回パーオンする毎に1度しでかしています。
次のグラフは、自分のGIRの数を横軸に、3パットの数を縦軸にとったグラフです。もう少しデータポイントが欲しいところですが、直線近似では、グリーンを捉える毎に3パットが劇的に増加しています。ぜんぜんスコアになっていない。もちろん、プロでも1ラウンド~2ラウンドに1回は3パットをするので、回数を重ねれば3パットは必然的に起こり得るのですが、この傾向はかなり問題ありです。
まずは、Putts per GIRを2.0にしなくてはなりません。ちなみに
TigerのPutts per GIRは、1.64です。
Tigerの3パットのデータは得られていないので、1ラウンドあたりのパット (Putts per Round)を比較してみます。次のグラフは、横軸にGIRを、縦軸にPutts per Roundをプロットしています。同様に、自分のデータは緑で、Tigerは赤にし、近似直線も点線で示しています。
僕の傾向として1つグリーンを捉える毎に、パット数が1つ増す、大きな右肩上がりが認められます。それに対して、Tigerの場合はかなり緩やかな上昇傾向があります。恐らくこれは、グリーンを捉える数が増えれば増える程、バーディ (1パット)が増えるチャンスが増すので、アマチュア程の傾きがないのではないかと思います。
実際、
Tigerのバーディ変換率 (Birdie conversion rate)は、36.46%でした。つまり、パーオンしたら、3回につき1回以上はバーディ (またはイーグル)になっている計算です。これはアイアンショットがピンに寄っているというロングゲームの差もあり、一概にパットの力量差だけではないのですが、自分の8.7%と比較すると、4倍以上の差です。さらにグリーンを捉える回数は僕の2倍以上なので、バーディーの数の差は8倍はありますね。。。
余談ながら、よくTigerはTV中継で「Par-5 Killer」と言われます。特にMastersでは16ホールあるPar-5で-10以上にし、Par-3,4をイーブン近くに収めて、優勝をする傾向があります。次の図は、Par-3, Par-4, Par-5での、スコアの内訳です。バーディー(およびイーグル) = 赤、パー = 水色、ボギー = 緑、ダブルボギー以下 = 黄 で表示しました。左が自分の、右がTigerのラウンドデータです。
Par-5のホールで60%をバーディまたはイーグルにし、Par-3, Par-4は、ボギーとバーディーが相殺している様子が伺えます。意外なことに、Par-3でのバーディーは一番少ないのですね。
さらにおまけで、Par-3,4,5毎のGIR (パーオン率)の比較。Par-5はアマチュアにとってもパーにしやすいだけに、Par-5で今の倍はパーにしたいですね。
3. スクランブル率
次のグラフは、スクランブル率 (パーセーブ率)を横軸に、18ホールのスコアを縦軸にプロットしたものです。自分のデータは青、Tigerのデータは赤にしてあります。さらに、紫の点が1つだけありますが、それはTigerの2013年シーズン通算の数字です。
自分のスクランブル率の平均は26.26%に対して、Tigerは57.23%でした (パット数の正確な数字は不明なので、実際は70%前後に分散達しているかもしれない)。
両者の曲線が平行線になるのは、GIRの数と、Putts per GIRの数の差かと思われます。GIRが少ないアマチュアの場合、80を切るにはスクランブル率を60%以上にしなければならず、逆に全くセーブできなくなると途端に90近いスコアに達してしまいます。
逆にTigerのようにGIRが平均して70%に達し、バーディーも数個とれる場合、50%もパー・セーブできれば悪くてもパープレーから2アンダーくらいは出せてしまう。(いいなぁ。)
GIRを増やすには、飛距離をのばし、正確なアイアンショットを練習しなくてはなりません(時間がかかる)。やはりスクランブル率を上げるのがてっとり速そう。GIRが少ないアマチュアの場合、スコアはスクランブル率にかなり依存します。
まとめ
プロとアマチュアの違いを図式化すると次のようになります。
- プロはGIRが多く、なおかつバーディー率が高い。Tigerの場合平均して3回に1回の割合でバーディにする。アマチュアはせっかくGIRしても3パットにしてしまい、Putts pre GIRが2.0を超える。
- グリーンを外した場合、プロは悪くても50%、平均して70%をセーブできる。アマチュアの場合25%程度。スコアは、ラウンド当日のスクランブル率に大きく依存。
(1) グリーンを捉えたときに、平均して2.0パット以下であがる。現在は、2.5回グリーンを捉える毎に、3パットを1回しており、Putts per GIRが2.18という悲惨な状況。3パットを減らし、1パットを増やす。
(2) グリーンを外したときに、スクランブル率 (寄せワンの確率)を50%以上にする。プロは、平均して100ヤード圏内を2打であがる。自分の場合は、2.7打。18ホールに換算して12.6打の差がつく。
(3) グリーンをより多く捉えられるように、ドライバー、ショートアイアン、戦略の練習をする。やはりGIRが増えるほど、寄せワンの確率への依存が下がり、70台が安定して出やすくなる。
70を切るには
(1) GIR > 67% (12ホールでパーオン)
(2) スクランブル率 > 67% (4ホールでセーブ)
(3) Putts per GIR < 2.00 (3バーディーはとる)
といったくらいの数字が必要。80を切るには、GIRかスクランブル率のどちらか一つが60~70%程度の極端によい数字がでれば可能ですが、70を切るには二つとも70%前後が要求されるといえそう。
結論
いま自分に必要なのは、ウェッジとパット力という結論になりました。GIRがいくら増えても3パットが増え、今のパッティングのスキルでは目立ったスコアの改善が全く期待できません。
今のパットのレベルでは、仮にGIRが15になるとしても、
- その内5ホールで3パットをして、5オーバー
- グリーンを外した3ホールで、スクランブルできず、酷い場合はダボもあり得るので、4オーバー
合計9オーバー・パーの、81というシナリオになります。
パットが劇的に改善されない限り、次のレベルには永久に上がれないということ数値的に明確にできました。
次のステップ
3パットが発生する状況を主に、第一パットの距離、コースの難易度などで分析して、練習に役立てたいと思います。さらに、グリーンを外した場合のアプローチの距離やライとセーブ率も分析して、ウェッジの練習に役立てたいですね。